鼻中隔弯曲症(鼻中隔湾曲症)

鼻中隔弯曲症(鼻中隔湾曲症)とは

鼻中隔弯曲症(鼻中隔湾曲症)とは鼻中隔は、鼻の穴の間にある仕切りのことです。鼻中隔は、たいていの場合、左右どちらかに曲がっており、日常生活に影響がなければ、特に問題はありません。鼻中隔弯曲症(鼻中隔湾曲症)は、鼻中隔が強く曲がっているために、それが原因で鼻詰まりやいびき、鼻血が出やすい、においがわからないなど症状があり日常生活に支障がある場合を言います。曲がった軟骨を手術でまっすぐにする治療が必要です。

鼻中隔弯曲症の原因

鼻中隔は軟骨、篩骨正中板(しこつせいちゅうばん)、鋤骨(じょこつ)などの軟骨と骨で構成されており、それぞれの成長スピードが微妙に異なるためにバランスを崩しやすい部位です。成長するタイミングのずれにより、曲がってしまいます。成長と共に徐々に曲がっていくため、成人になって発症することがほとんどです。

〜人類の進化がもたらした病気〜

鼻中隔の弯曲は2足歩行する動物だけに見られる現象です。そのため、鼻中隔弯曲症は、人間が進化の過程で直立したことから引き起こされたと言われています。4足歩行の動物は、鼻と口が前方に大きく突き出していますが、人間の鼻と口はほとんど突出していません。さらに脳が他の動物よりも大きく、鼻の上にある前頭葉が特に大きいため、その重みが鼻中隔にかかることで曲がってしまうという説もあります。

鼻中隔弯曲のタイプ

ほとんどの方の鼻中隔は曲がっています。曲がり方には、曲がる位置から「上方型」「下方型」、1カ所で折れ曲がった「K字弯曲(くの字)」「L字弯曲」、曲線を描いている「S字弯曲」「C字弯曲」などがあり、人によって様々です。

QOLにかかわる弯曲

鼻に症状を抱えているとQOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)が下がり、本来備わっている能力や才能を活かしきれなくなるケースが少なくありません。鼻中隔の弯曲異常は、鼻腔の通気を悪くし、弯曲部分の粘膜が引き延ばされ薄くなるため、粘膜にもトラブルを抱えやすくなります。

鼻中隔弯曲症の症状

代表的な症状は鼻づまりです。頻繁な鼻出血や慢性副鼻腔炎などを引き起こすこともあります。

鼻づまり(鼻閉)

鼻中隔弯曲症で最も多い症状です。特に片方だけの鼻腔がよくつまる場合、そちら側に鼻中隔が突き出て、空気の通り道が狭くなっていると考えられます。

鼻出血

鼻中隔が曲がっている部分の粘膜は指が当たりやすいため、血管が傷付きやすくなっています。そのため鼻血が出やすくなります。

アレルギー性鼻炎の悪化

もともと狭い鼻腔が、粘膜の腫れでさらに狭くなるため、鼻づまりの症状が悪化してしまいます。さらに、慢性副鼻腔炎を起こす可能性も高くなります。

慢性副鼻腔炎

鼻づまりを頻繁に起こすと、副鼻腔内の換気が悪くなり細菌が繁殖しやすくなってしまいます。その結果副鼻腔粘膜の炎症が持続することで慢性副鼻腔炎を引き起こします。頭痛や分泌物の増加など、慢性副鼻腔炎の症状が見られたら、注意が必要です。

頭痛や片頭痛

鼻呼吸ができず口呼吸を繰り返すと、呼吸が浅くなり脳が必要とする酸素が不足します。酸素不足は、しつこい頭痛や、吐き気を伴う片頭痛を引き起こすことがあります。

その他

ひどいいびきやくしゃみ、味覚障害や嗅覚障害、中耳炎などを引き起こすこともあります。

鼻中隔弯曲症の検査

鼻中隔弯曲症の検査弯曲の程度や、慢性副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎といった合併症の有無を調べます。

1視診・内視鏡検査

「鼻鏡」という器具で鼻孔を広げ、鼻中隔を直接観察します。専門医であれば、この視診で弯曲の程度をかなり正確に判断できます。次に、内視鏡を使って、粘膜の状態も含め鼻腔内を詳細に観察します。

2CT(コンピュータ断層撮影)

鼻中隔の弯曲の仕方は様々です。CT検査では、エックス線で鼻を断層撮影し、鼻中隔がどう曲がっているかを検査します。同時に、副鼻腔炎などの合併症の有無を正確に把握します。

3その他の検査

アレルギー検査をすることもあります。

鼻中隔弯曲症の治療

鼻中隔弯曲症を根本から治すには、手術しかありません。手術を希望しない場合や、症状が軽い場合は、服薬・投薬での対症療法を行います。しかし、対症療法は一時的な効果しか見込めず、長期間の服薬・投薬で、症状が悪化することも珍しくありません。そのため、定期的な専門医による診察と経過観察が必要になります。当クリニックでは、弯曲の程度にもよりますが、手術による治療をおすすめしています。

対症療法

症状に合わせて、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬、ステロイド点鼻薬などを使い、症状の緩和を図ります。点鼻薬は鼻づまり解消に効果的ですが、常用すると血管が開き粘膜が厚くなる慢性肥厚性鼻炎(薬剤性鼻炎)になりやすくなります。症状を逆に悪化させてしまうこともあるため、注意が必要です。抗炎症薬や抗生物質、アレルギー性鼻炎に効果的な内服薬を使用することもあります。

ネブライザー療法は、コンプレッサーで薬成分が含まれる液体を霧状にして噴出するやり方です。複雑な形をしている鼻の奥の隅々まで薬成分を届けることができます。軽い鼻づまりであれば、市販の鼻腔拡張テープも効果的です。

鼻中隔矯正手術

鼻中隔軟骨の湾曲部分を切除し、まっすぐに整える手術です。局所麻酔をした後、鼻から器具を挿入して鼻中隔を切開して施術します。慢性副鼻腔炎を合併している場合は、その手術を同時に行うこともあります。

術後は、切開した粘膜を修復し、傷への感染を防ぐために抗菌薬を服用します。日帰り手術(局麻手術)の場合は帰宅後、安静にされてください。鼻中隔軟骨の強度が下がるため、鼻に強い衝撃を受けないよう注意する必要があります。

鼻中隔矯正術は、鼻がへこむ「鞍鼻(あんび)」のリスクがあるため、信頼のおける専門医による施術をおすすめします。なお、顔面の骨格が完成する前に手術を受けると成長に悪影響を及ぼす恐れがあるため、19歳以上の成人でなければこの手術を受けることはできません。